「月日貝(ツキヒガイ)」と聞いて「知っている」と答えられる方はどれ位いらっしゃるでしょうか?
実は月日貝(ツキヒガイ)は、鹿児島の方でもご存知でない方が多くいらっしゃいます。
名前の由来は?色や形は?食べられるの?どこの海で獲れるの?
弊社では主力商品として月日貝(ツキヒガイ)を獲り、販売し、お客様へ月日貝(ツキヒガイ)情報を発信しております。
月日貝(ツキヒガイ)を初めて知った方、詳しく知らないという方に向けて、まずは、月日貝(ツキヒガイ)の名前の由来から見ていきましょう。
月日貝(ツキヒガイ)の名前の由来は?
月日貝(ツキヒガイ)の名前は、表と裏の貝殻の色が由来となっています。
裏側の煌々と輝く様は淡黄白色(クリーム色)で「月」に見立て、表側の灼熱に燃え盛る様は赤褐色で「日」に見立てています。
1つの二枚貝が持つ2つの色、「月」と「日」の「貝」で月日貝(ツキヒガイ)と言います。
1791年に初めてドイツ人によって学術名が名付けられ、その後、和名の月日貝(ツキヒガイ)が広まったそうです。
日本最大の産地である鹿児島県日置市では、お皿(サラ)のような形状の貝(ゲ)ということで「サラゲ」と呼ばれ、昔から多くの地元の方々から親しまれています。
続いて、日本国内の月日貝(ツキヒガイ)の産地を見ていきましょう。
月日貝(ツキヒガイ)の産地
月日貝(ツキヒガイ)の産地は日本全国どこにでもあるわけではありません。日本最大の生産地である鹿児島県日置市から見て、九州、本州へ向けて、いくつかの漁港で水揚げされているようです。
長い年月をかけて対馬海流の暖かい流れに乗って日本海側を北上していったと思われる月日貝(ツキヒガイ)。反対に鹿児島県のトカラ海峡の岩礁帯を通過する時に発生する日本海流(黒潮)の強力な潮の流れに耐え抜いた月日貝(ツキヒガイ)は、太平洋沿岸に沿って北上していったと考えられます。
地域別に見てみると、
九州では
鹿児島県(日本最大の産地:日置市)
福岡県
長崎県
中国地方では
山口県
鳥取県
島根県
関西地方では
愛知県
等で水揚げされているようです。
月日貝(ツキヒガイ)の生態
月日貝(ツキヒガイ)の生態はまだ完全には解明されていません。
主な生息域は、太平洋側では房総半島以南、日本海・東シナ海側では山陰地方~九州南部です。西日本側に広く分布していることが分かります。
水深10~100mの細砂地を好み、浮遊するプランクトンを鰓(エラ)で濾し取り、栄養にしています。
旬は9~11月。夏の暑さが落ち着き、涼しさが戻ってきた頃が最も活発に活動する時期です。
主な天敵はヒトデと言われています。ヒトデに襲われそうになると貝殻をパクパクさせて海中を泳ぐことは、まだあまり知られていない月日貝(ツキヒガイ)の特徴の1つです。
漁獲量は少しずつ増加してきているものの、その年の海洋状態(海面温度、天候、生息域の変化、海水流、海洋ゴミ等)によって変動があるとされ、自然界での増減要因や、稚貝からの安定成長因子等、未解明なことが多い生物です。
月日貝(ツキヒガイ)の生物学的分類
月日貝(ツキヒガイ)は見た目の通り、貝の仲間です。しかし、「貝」という分類は存在しません。
それでは月日貝(ツキヒガイ)はどのような分類なのか詳しく見ていきましょう。
- 界 :動物界
- 門 :軟体動物門
- 網 :二枚貝網
- 亜網:翼形亜網
- 目 :イタヤガイ目
- 超科:イタヤガイ超科
- 科 :イタヤガイ科
- 亜科:イタヤガイ亜科
- 属 :イリストラム
- 種 :ツキヒガイ
分類を見てみると「門」で軟体動物とあるので、見た目は大きく異なりますがイカやタコの遠い親戚といったイメージでよいかもしれません。
10万種以上いると言われている軟体動物の仲間というだけで、どれだけ繫栄したのかが分かります。
そして「網」で二枚貝ということが分かります。見た目にも表と裏の貝殻2枚で柔らかい身を守っていることからも分かりやすいですね。
世界に2万種以上がいると言われている二枚貝は、食用として広く親しまれています。
「網」は二枚貝網の他にも、屈足網、腹足網、頭足網、単板網、多板網、尾腔網、溝腹網があります。どれも見た目が貝なので分類を意識していなくても、見たことがある種類もあるのではないでしょうか。
人類は16~15万年前から貝食しており、日本では縄文時代の貝食が確認されている程、日本人にとってとても馴染みのある食材です。
月日貝(ツキヒガイ)とホタテとの違いは?
よくお客様から「月日貝(ツキヒガイ)とホタテとの違いは何?」と質問を受けます。
フォルムは似ているけど殻の色や質感が違う。だけど殻を剥いてみると身の形や色が似ている。
形状が似ているには明確な理由があります。
月日貝(ツキヒガイ)もホタテ貝もどちらもイタヤガイ科に属する二枚貝だからです。
大きく違うのは、生息域や殻表面の凹凸等です。
ホタテ貝は冷たい海を好み、主に北部(寒冷地)に生息しています。ホタテ貝の日本有数の産地である猿払村が北海道の稚内のすぐ近くであることからも、冷たい海を好んでいることが分かります。
一方の月日貝(ツキヒガイ)は「南のホタテ」と一部のファンから言われているように、温かい海を好みます。
また、生息している水深にも違いがあります。
ホタテ貝は水深10〜30mの砂地に生息しており、稀に水深40〜50m程まで広がっています。一方、月日貝(ツキヒガイ)は水深10〜100mとホタテ貝に比べて、より深海まで生息域が広がっています。
味は旨味、甘味が強く、歯応えのあるプリッとした食感が特徴です。
また、殻表面の凹凸にも違いがあります。
ホタテ貝は、縦に深めの溝が何本もあり、生息域によっては他生物をはじめとした付着物が確認できます。
月日貝(ツキヒガイ)に関しては、表面がツルツルとしていて指でなぞるととても滑らかで、まるで水面を撫でているかのような感触さえ覚えます。
なぜ、月日貝(ツキヒガイ)の殻表面が滑らかでツルツルしているのか?
まだ生態が明らかになっていないだけあって、明確な理由は未解明のままです。しかし、ホタテ貝と同じように外敵に襲われそうになった時や、新しい住処を求めて海の中を一生懸命に泳いでいる姿を見かけることから、きっと水の抵抗を極限まで小さくするために長い年月をかけて進化した結果なのかもしれません。
まだ月日貝(ツキヒガイ)を見たことがない、触ったことがない方は、表面の滑らかでツルツルしている殻を意識して観察してみてください。滑らかでツルツルな殻のお陰なのか、フジツボや海藻等、他生物の付着がない、美しい殻の形状、模様を見ることができます。
月日貝(ツキヒガイ)を食す
月日貝(ツキヒガイ)はホタテガイに似た見た目をしています。大きくてプリプリな貝柱を実際に食べてみるとシャキシャキとした食感に加え、噛めば噛む程に旨みが出てきます。
初めて月日貝(ツキヒガイ)を食べた方は口を揃えて「おいしい!」「甘い!」「うまい!」と仰います。
鮮度低下がとても早く、刺身で食べられるのは生産地ならではの楽しみ方です。
生で食べても加熱しても好みに合わせて調理できるのは、素材に癖がなく、うま味が満ち溢れているからです。
高タンパク低カロリー、成長も早く養貝サイクルは他の二枚貝と比べても突出しています。
弊社では、月日貝(ツキヒガイ)を獲るだけではなく、おいしく食べるための情報も発信もしています。
旬を逃さず、お好みの方法でお召し上がりください。